実は私、『トートバッグ好き』だ。
カタチがかっちりしつつも、カジュアルにがんがん使える。
そんな気のおけない感じが好きなのだ。
バッグのみならず、洋服などにも共通する嗜好なのだが…。
当然、AHM風カービング入りトートバッグの発売となるのだが、
これを最初に作ったのは2年前。
この時はコンパクトなサイズにこだわった。
今年は、満を持してちょっと大きめサイズの登場となった。
左が2年前に試作したもの。右がニューフェイス。
きっかけは一人のお客様のオーダー。
ちょうど、私が考えていたサイズと同じくらいのものをご所望されていた。
渡りに舟、とばかり新製品の開発
(というとかなり大袈裟だが)がスタートしたのだ。
まず、まっさきに私がこだわるのは『重さ』だ。
特に女性の場合言えることなのだが、バッグが重いと持つだけで疲れてしまう。
いくら見た目がよくても重いバッグはNGなのだ。
革という素材はどうしても重くなってしまうので、
いかにパーツを少なくするかが軽量可のポイントだ。
『頑丈さ』も合理的な女性ユーザーの求めるところ。
AHMでは小さな工夫をいくつか。
型崩れを防ぐ為、底をしっかりと補強してあったり、
丈夫なアメリカ製のナイロン糸を採用してあったり…。
持ち手の付け根には、スタッズが打ってある。
頑丈になるし、見た目もかっこよい。
長い時間使われるものだからこそ、エッジ(コバ)はきっちり磨く。
少しマットに仕上げるのがAHM流だ。
持ち手は肩にかけて持てる絶妙な長さ。
まちもたっぷりなので、モノが沢山入る。
トートはこうでないとね!
全体的にナチュラルな雰囲気なので、
服装をえらばず使えるのではないかと思う。
モチロン、男性にも持って頂きたい!
ちなみに、白い革はお客様の好きな色に変えることも可能だ。
まだ白以外作ったことがないので、他の色でも見てみたいかも…。
チャレンジしてくれる人、いないでしょうかね??(笑)
自分でいうのは大変おこがましい。
しかし、それを承知の上でいう。
今まで数多くの製品を作ってきたが、その都度そんな気持ちになる。
自分で作ったものは、自分が欲しくなる。
いや、欲しくなる、というのは語弊があるかもしれない。
『我ながら、これはイイ』と思うのだ。
逆に、そう思わないものはお客様に渡せないけどね…
前置きが長くなったが、今回のカスタムもイイ。
カービングのフラワーは『桜』
『ちょっと椿ぽくない?』とは社長の弁だが、
様々悩み、実験の結果こうなった。
本来、桜の花はフラワーセンターに隙間がある。
しかし、私はそれをびっしり隙間なく刻印で打った。
スカスカしているといまいち納まりが悪くかっこ悪いのだ。
カービングは、見た目の美しさが最重視(?)のAHMなのだ。
大事な使い勝手のほうはというと…
今回はジャバラマチと普通のマチのオプション。
ちなみに美しいジャバラを作るにはテクニックと手間がいる。
薄い革をたっぷり湿らせ、等間隔に叩きパーツを作る。
こういったお財布の類はただでさえパーツが多いので、
縫い合わせるのにはいつも苦労する。
ジャバラは広がるので、縫い合わせしやすいからまだよい。
パーツの間が広がらない部分はこのような曲がり針を使用する。
こうすると針先がコバに当たらず、キズがつかないからだ。
キズがついたところであとで磨けばきれいになるので、
それほど気に病むことはないのだが、私はそれがどうにもいやなのだ。
だから、曲がり針に持ち替え、
時間をかけ、焦らず、じっくりと縫いすすめる。
全体的な印象としては、THEメンズデザイン!という感じ。
繊細なカービングが対照的で効いている。
最後にご注文を下さったN.I様。
誠にありがとうございました。
ここまでカスタムさせて頂けると、
作り手としても、とても楽しくやりがいがありました。
どうか、こいつを良い色つやに育ててやって下さい。
よろしくお願い致します。
このカスタム製品には心あたたまるお話がある。
今回、ご注文を下さったお客様M様はなにを隠そう(!?)
カスタムウォレットNO,1を所有されているお方である。
この方は、私に時節メールなどを下さる、
それはありがたいお客様なのである。
なんでも、M様のお母様が
常々AHMのウォレットをうらやましく思っていて下さったようで、
今回お誕生日のプレゼントにされるそうである。
なんと素晴らしい!親孝行なお方である。
椿の花がポイント。
カービングの染色を赤系の茶色でまとめてみたり、
フラップボタンをサドルレザーでくるむなど、
全体的にフェミニンかつ上品な印象になるように工夫してみた。
中面は『ベーシックウォレット』と同じだ。
そして、M様が現在も育て中のウォレットの写真を送って下さったので、
ブログ上でご紹介させて頂く。
(勿論ご了解済みである。)
ジャ~ン!!
2年ほど使用した見事な色、つや!!
ここまで、キズもなく美しいエイジングは、
相当大切に扱わなければならないはず。
実際、M様はとても気を遣われていたそうだ。
今回、M様から頂いた写真をみて、しみじみそう感じたのは、
私にできるのはモノを完成させるまでだ、ということ。
AHM製品は、お客様の手に渡ってからはじめて時が動きだす。
そして、お客様とともに年齢を重ねてゆくのである。
丈夫な革と丁寧な仕立てで、
AHM製品は市販品よりずっと長持ちすると思う。
長い時間、それぞれのお客様の友として活躍していくであろう。
だからこそ、作り手として、
その時できる精一杯のことをしておこう、と思うのだ。
また、そうできるよう魂を込めて日々精進せねば!
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今、新製品に取込み中。
トートバッグにちょっと大きなサイズが仲間入り。
どうぞお楽しみに!